「職人の所得向上」は熟成酒・古酒が叶える――匠創生・安村社長が語った創業ストーリー

2020.11.07

「職人の所得向上」は熟成古酒が叶える――匠創生・安村社長が語った創業ストーリー

ウェビナリスト編集部

原則10年以上熟成された日本酒・焼酎・泡盛・梅酒を全国から厳選した熟成古酒のプレミアムブランド「古昔の美酒(いにしえのびしゅ)」を立ち上げ、日本全国の職人の所得向上を目指す株式会社匠創生。2017年に創業された同社は、何を信条とし、熟成古酒を広めてきたのか? そこには社長・安村亮彦氏の職人たちへのリスペクトと熱い思いがありました。本記事では、匠創生の創業時の物語や今後の展開にフォーカス。記事内の動画ではインタビューの完全版がご覧になれます。

インタビュー前編
インタビュー後編

職人の所得向上を目指して匠創生を創業

――匠創生株式会社を起業したきっかけを教えて下さい。

私は株式会社パソナグループでキャリア支援をしていたのですが、支援の一環で10年くらいキャリアカウンセラーをしていたのですが、その中でもいわゆる就職に困っている方がいらっしゃいました。たとえば音楽家、芸術家、職人、元スポーツ選手といった方々です。そういう方々を支援していかなきゃいけないなと思ったのが、匠創生を起業したきっかけです。

別に「社長になりたい」というよりは、そういう方々を支援する仕組みを作りたいなという思いがありました。ちょうど、そのときにパソナグループの中でベンチャー企業を起業したい人を支援・出資するベンチャーファンドのような制度がありました。そこに手を挙げて申し込みをしたんです。

すでにパソナグループは音楽家や芸術家、ハンディキャップのある方や元スポーツ選手への支援を40年以上の歴史の中で取り組んできました。パソナグループでまだ支援をしきれていない方々は誰かを考えたんですよ。

近年のクールジャパンや、これから国内外で観光客が増えてくることを考えると、伝統産業に関わる職人さんや作家さんをリアルに支援できる仕組みを作りたいと思うようになりました。そこで匠創生という会社を2017年5月に創業したんですが、そのビジョンは今でも一貫して、職人のリアルキャリア支援、つまり職人さんの所得向上を目的として活動しています。

匠創生の役割は職人たちと汗水垂らすこと

地方創生の事業全般に言えますが、職業として食べていけないからこそ、結局はみんな諦めて辞めてしまう問題があるんですよね。匠創生を立ち上げる前、全国の職人さんを訪ねて周って仮説を立てたんですが、業界には課題が2つあると思いました。

一つは後継者の作り手がいなくなるから廃業・倒産・衰退すること。もう一つは売上販路がなくて稼げないから衰退すること。

結局は職人さんが稼げない職種になってしまっているので、子どもに継がせられない問題なんだなと思いました。例えば、一千万円を稼げる職業だったら、たぶん子どもも継ぎたいと思うんですよ。そういう職業ではないから、後継者の問題にも発展していくのかなと思っています。

私は匠創生を立ち上げて、職人の所得向上のための売り上げを作っていきたかった。ただ、コンサルティングするだけだと、職人さんも別に意味がなくて困ってしまう。

例えば、ある職人さんのところにデザイナーさんが1年間来たとします。「モノの形を変えましょう」とか、「今のライフスタイルを変えましょう」とか、いろいろ提案をくれます。職人さんたちもモノづくりが好きだから、それを作ります。一応作るんですけど、モノのデザインが変わったところで、販路がなければ売れませんよね。デザイナーさんも販路までは保証できないんですよね。

なので、僕たち匠創生の役割は、職人さんたちととにかく一緒になって、汗水垂らして販売することでした。一緒になって売り上げを上げることがとても重要です。「匠創生の売り上げ=職人・作家さんの売り上げ」と考えて、日々仕事をしています。東京の直営店で売ることも、職人さんの売り上げにつながると思っています。

匠創生は工芸品の販売からスタートしました。だけど、工芸品をただ売るだけになってしまっていた。正直、非常に苦戦しました。ここで、工芸品と一緒に売ろうと思っていた日本酒などのお酒は人気がまだまだあるのではないか、と思い至りました。

ヴィンテージ熟成に無限の可能性を感じた

――熟成古酒を売ろうと思った理由を教えてください。

ちょうど2年前だったんですが、もっとエッジを効かした新しい商品やサービスをプロデュースするように考えていかなきゃいけない時期でした。どういうものを売ろうかと考えたときに、当初は日本酒の純米大吟醸やクラフトビールも候補にありました。そこで出てきたのが、熟成古酒だったんです。

もともと、熟成させた日本酒はおもしろいし、おいしいと思っていました。海外への輸出も増やしたり、日本酒の職人たちの価値を上げなきゃいけない時に、参考にしたのはワインやウイスキーの世界です。非常に売れ筋だった世界です。ロマネコンティの20年が人気のように、ワインにはヴィンテージワインという市場がある。ウイスキーにも、みんなが憧れる山崎○年などが何百万円で売買されてますよね。

結局、ヴィンテージ・熟成の世界なんですよね。なぜか日本を代表するお酒である日本酒には、ヴィンテージ・熟成という世界が明治時代を最後になくなってしまっていたんですよね。日本中の酒蔵さんが今ある新酒を磨こう、フルーティーにしようとしても、世界から見ても結局は新酒の一種になってしまうんですよ。

明治時代までは高級酒として存在していた、熟成古酒の世界をもう一回復刻させたかったんです。世界に対して、日本酒の熟成古酒を高級かつ貴重なものとしてプロモートしていく活動が必要だなと思いました。こうして目標や世界観がしっくりきて、熟成古酒をブランド化したのが「古昔の美酒」でした。

――「古昔の美酒」の魅力は何でしょうか?

「誰も知らないこと」ですかね。もともと、私はキャリアカウンセリングをしながら、人材紹介や求人広告などの人材ビジネスの営業をしてたんですけど、何の業種でもだいたい競合っているじゃないですか。でも、この熟成古酒は意外にも競合がいないんですよ。完全にブルーオーシャンです。

また、紹介する楽しみもあります。我々の熟成古酒は日本中を周れば周るほど、いろいろな熟成古酒がありますよね。ヴィンテージ日本酒の中でも白ワインみたいな味わいもあれば、赤ワインのようなものもある。ブランデーっぽいものもあります。その魅力をお客様に説明するのが楽しいですね。おいしいお酒をどのようにどのようにつくっているのか。どのように真摯に作っているか。人柄のようなものを含めておすすめしています。

徹頭徹尾、「職人の所得向上」を掲げて

――匠創生のこれからのビジョンは何でしょうか?

これから成し遂げたいのは「職人の所得向上」です。これに尽きます。今は熟成古酒というコンテンツを一つのツールとして使っておりますが、まずは日本の熟成古酒という市場をとにかく世界中に普及させて市場を創出することを目指しています。その市場を作ることが、匠創生の存在意義だと強く思ってます。

日本酒を含め、焼酎、泡盛、梅酒など国産の熟成古酒の市場を作ることによって、日本のお酒の価値が上がって、日本の価値が上がる。つまり、売上が上がっても職人さんの所得が上がっていく。所得が上がっていくと跡継ぎもできる。職人さんになりたい人が安心して職人になれる世の中にしていきたいと思っています。

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