DAZN以外にも沢山ある!スポーツ配信サービスの面白さを知ろう(後編)

2020.11.17

実況アプリで、スポーツ観戦をもっとおもしろく GayaRとPlayer!のニッチ戦略

小石原 誠

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い増えた自宅時間を楽しくしてくれる「スポーツ配信サービス」。前回の記事では、サービスの特徴や企業の戦略といったビジネス的な観点からスポーツ配信サービスについて解説し、配信サービスの種類の多さやコンテンツの複雑さの要因について紐解いてきました。

今回は、前回ご紹介したメジャーな業者による「ライブ映像」の配信とは異なる、ニッチだけど非常に面白味のある配信サービスを2つピックアップして分析していくことで、ビジネス的な観点からヒントを得るとともに、スポーツの新しい楽しみ方を見つけていきます。

スポーツ観戦に「実況・解説」をプラスする『GayaR』

GayaRより引用

GayaRのサービス内容

株式会社スピードリンクジャパンが運営している「GayaR(ガヤール)」は、スポーツの試合をリアルタイムで「実況・解説」してくれるアプリです。

通常、スタジアムやアリーナ等での「生」のスポーツ観戦では、実況や解説が会場内に流れることはありません。そのため、その競技やルールをあまり知らない人にしてみると、「生」のスポーツ観戦は「何が行われているのかよく分からない」という状況になりがちです。そういった場合にGayaRを使ってみると、スポーツの試合を観ながら実況者(「ガヤラー」と呼ばれます)による実況・解説を聴くことができる、という訳です。

GayaRより引用

また、実況・解説を聴くだけではなく、ガヤラーに対して質問をしたり、試合に対する感想や意見をユーザーがコメントし合ったりする機能も備わっており、双方向・多方向のコミュニケーションが楽しめるようになっています。

GayaR(ガヤール)の面白さ

スポーツが好きで観戦になれている人は「実況」や「解説」は無くても問題なく楽しめるものですが、そうでない人にしてみたら、「生」のスポーツ観戦は何が行われているのかよく分からず、置いてけぼりにされてしまう

そこに目を付けたところが、GayaRというアプリの面白さだと言えます。

スポーツ観戦を楽しむには、「ルール」や「ゲーム戦略」といった難しい要素をある程度理解しなければなりません。そのためには、勉強して頭で覚えてから実際の試合を見て理解する、という面倒なステップを踏む必要があり、ここで脱落してしまう人も少なくないでしょう。

GayaRでは、実際の試合展開を見ながら、ルールやゲーム戦略について解説してもらえるので、スムーズに分かりやすく理解できます。また、先述のとおり分からないことがあれば質問もできるのが、テレビ等の実況・解説にはないメリットです。

サービス展開の特徴

2019年4月にリリースされたばかりのGayaRですが、2020年現在時点ではJリーグの東京ヴェルディ、アメリカンフットボールのXリーグ、大日本プロレス、そして日本フェンシング協会等の試合がサービスの対象となっています。

特に東京ヴェルディに関しては、「VERDY RADIO」と称してクラブのOB選手が実況を行なったり、有名なサポーターも解説として参加するなど、かなり力を入れてサービスを展開しています。スピードリンクジャパンは今年の1月に東京ヴェルディとコーポレートパートナー契約を締結しており、今回ご紹介しているGayaRのほかにも東京ヴェルディのホームページでAIチャットボットを導入・運営する取組みも行なっています。

株式会社スピードリンクジャパンとの 新規コーポレートパートナー契約締結のお知らせ|東京ヴェルディ

東京ヴェルディ

またGayaRでは、比較的マイナーなスポーツ競技についてもサービス提供を行なっている点が強みです。東京ヴェルディなどのようなメジャーなコンテンツは他に様々なサービスが提供されている一方で、マイナーなスポーツ競技の場合はGayaRが独占的にサービスを提供でき、コアなファンを確実に囲い込めるメリットが生まれます。

GayaRより引用

特に、アメリカンフットボールなどのようにルールや戦略が一般的に知られていない競技だと、GayaRの強みはより一層発揮されるでしょう。今後は、こういったGayaRならではの良さがどのように認知され、アプリの認知度や利用につながっていくのかが要注目ポイントだと言えます。

スポーツ観戦の「熱狂を共有」する『Player!』

Player!より引用

Player!の仕組みとサービス内容

株式会社ookamiが運営している「Player!」は、一言でいうと「熱狂を共有できる」アプリです。リアルタイムで配信されるスポーツの試合経過を見ながら、ユーザー同士でコメント(チャット)を投稿し合うのが主なサービスの仕組みです。

前回ご紹介したようなライブ映像配信サービスやテレビ観戦の場合、ユーザーは基本的に試合の様子を「受け取る」ことしかできず、スポーツ観戦で生まれる感動や熱狂は違う場所で発散する必要があります

しかし、同じ選手やチームを応援するファンが集まるPlayer!であれば、生まれた感動や熱狂をすぐ言葉にして共有できる、という訳です。また、Player!では試合の出場メンバーやスタッツなどの情報を確認できたり、各種メディアのニュース記事を閲覧できたりもするので、読み物コンテンツとしても使えます。

Player!より引用

さらにPlayer!では今年の6月から、自分が応援しているチームにお金を送ることができる「Player! サポート」という仕組みも導入しています。

これまで、ファンやサポーターの立場からチームを直接的に支援するためには、チケットやグッズを購入するくらいしか手段がありませんでしたが、Player! サポートを使うことでスタジアム等に足を運ばなくても自分が好きなチームをサポートできるようになった、という訳です。新型コロナによりスタジアム等に足を運びづらくなった今シーズンは特にユーザーに刺さりやすいサービスだと言えます。

Jリーグチームでも導入「Player! サポート」は全チーム、還元率95%!スポーツチームのための新たな収益モデルを提案します|PR TIMES

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一人でもスポーツの熱狂を分かち合える

先にご紹介したGayaRの面白さは、スポーツ観戦にあまり慣れていない人にとっての利便性に着目した点である旨を解説しました。Player!の面白さはその逆で、スポーツ観戦が大好きなファンやサポーターの「熱狂を分かち合いたい!」「語り合いたい!」という心理を突いた点です。

スポーツに限らず、何かのコンテンツを好きになると、そのコンテンツについて自分の意見や考えを発信したり、ファン同士で感動や熱狂を分かち合いたい気持ちが芽生えます。ところが、そういった行動はファンが多く集まるスタジアムやスポーツバーなどの場所でなければ難しいです。特に一人で観戦するタイプのファンは、自分の中に生まれた熱狂を発散する手段が乏しいという悩みを抱えがちです。

もちろん、ツイッターなどで自分の想いを「つぶやく」手段があり、実際にそうしているファンも多いのですが、ツイートしてもリアクションが無く一方向の発信になってしまっていたり、場合によってはスポーツに興味がない他のユーザーの迷惑になってしまうこともある、といった弱点があります。

しかし、同じコンテンツが好きなファンがひとつのプラットフォームに集うことができるPlayer!であれば、そういった気兼ねなく自分の熱狂を発散したり共有できたりします。

独自のサービス展開

Player!で楽しめるスポーツ競技の幅はかなり幅広く、Jリーグやプロ野球、Bリーグなどのメジャーな競技はもちろんのこと、ラクロスやホッケー、ハンドボール、水球などといった比較的マイナーな競技までカバーされています

そしてPlayer!の最大の特徴は「学生スポーツも幅広く対象にしている」ことです。もちろん、競技によってカバー範囲には差がありますが、競技によっては高校生の部活動の試合までもカバーされていたりするので、その幅広さには驚かされます。

Player!より引用

なぜPlayer!では学生スポーツまでも対象にしているのでしょうか?

実は「学生スポーツ」は、いまスポーツビジネス界において注目を集めているジャンルです。日本では東京六大学野球などの一部コンテンツを除きメジャーな存在ではない学生スポーツですが、例えばスポーツビジネスの本場・アメリカの大学スポーツは、8000億円もの市場規模がある優良なマーケットとして知られています。

そこで日本でも、学生スポーツの潜在的な市場価値に着目をして、アメリカの大学スポーツ管轄組織である「NCAA」に倣った「UNIVAS」という組織が2019年に発足し活動を始めているのです。

MLBに匹敵する米国大学スポーツ市場 理由は「NCAA」に|事業構想オンライン

事業構想オンライン

とはいえ、日本のUNIVASはまだ始まったばかりであり、アメリカのNCAAのようになれるかは賛否両論の意見があるのが実状です。しかし、もし今後日本の学生スポーツの市場価値が向上すれば、Player!のように今の時点で学生スポーツを取り扱っているサービスにも大きな利益をもたらすでしょう。

まとめ

今回は、ニッチだけど非常に面白味のある配信サービスをピックアップし、分析しながら解説をしてきました。どちらのサービスにも共通していることは、大手の配信サービス業者がカバーしていないスポーツ競技までサービス対象としていることと、いまのスポーツ観戦の楽しみ方における課題を克服する形でサービス内容を形成していることの2つです。

これらのニッチなサービスが今後成長していくためには、取り扱っている比較的マイナーなスポーツ競技の成長が必要不可欠です。サービス提供者には、サービス提供を通じてスポーツ競技そのものを成長させていくスタンスが重要だといえます。

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引用・出典・参考

GayaR(ガヤール)

Player!

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